『氷空の音』
動物界宙音発門柔多脚網 ソラノネ
「宇宙の根」とも言われている。
宇宙空間に生息する巨大生物。
こちらの世界における「アマクサクラゲ」に似た形状をした生物であり、体長は個体により凡そ30m~150m。黒い体色の表面に脈打つような青い線上の発光が見られ、触手を帆のようにして進行方向を決めつつ宇宙を泳ぐ。
傘状の部位から青いリング状の光を発し、このリングに接触した宇宙服や船舶等の内側では「シャーン」という鈴(楽器の一種)のような音が響く。これはリングが光を通して振動を伝えるためであり、この振動は「同種に向けたコミュニケーション」とも「外敵に対する威嚇行為」とも説が唱えられ、今なお研究が続けられている。
惑星上の生物から大気へ発せられる熱エネルギーを体表から得ることで糧とし、その営みがより活発な惑星の周辺空域に滞在する生態を持つ。そのため人口の多いヴィルーパの周囲にも遊泳する『氷空の音』は頻繁に見られ、上層の空からであれば直接の観察も可能。あくまで排出され大気へ拡散したエネルギーを吸収している形であり惑星文明への影響は無いが、小型船舶で『氷空の音』の大群に突っ込むなどした場合はジェネレーターやエンジンに乱れが起きる場合がある。
ちなみに食用可能。栄養価・カロリーはほぼ無に等しいうえ保存が効かず宙産物として優れない点やその巨体に対し漁を行う難易度から市場に並ぶのは稀で、中層での祭りごとに合わせ漁が行われる時や、偶然宇宙港に流れ着いたり天蓋・リングに引っ掛かった個体が駆除のついでに捌かれた時など食べられる機会は限られている。
食材としては冷たく柔らかい宇宙的な味を持ち、調理された後も特徴的な青い発光を残すため煌びやかでおめでたいものと扱われる。麺状に細く切りつゆに漬けた『氷空の麺』は暗がりではテープライトじみた様相となり、中層市民たちは敢えて暗い中でそれを啜るのを楽しんでいる。