セレマテクス寄生体
セレマテクス寄生体 – Ascaris Verbum Textura
(下層での通称:「生身喰い」「毒肉虫」)
概要
ヴィルーパに生息する有機生物(宙域生物学定義O-2項に則る)に感染する寄生虫。
惑星外より持ち込まれた線虫の一種がヴィルーパ下層の汚染水源に住み着いたことで変異を起こしたものが起源とされる。外で見られるものはその殆どが卵であり、成虫は後述する弱点もあり宿主から離れた状態で見られることは少ない。
寄生経路および繁殖と対処法
寄生経路は食品に卵が付着している等して起きる経口感染であり、寄生後は主に腸内に住み着いて成虫となり、宿主の栄養を血液から摂取して生存する。
成虫は宿主の腸内で産卵を行い、それが排出されることで卵を宿主の体外へと拡散させる。
成虫の大きな弱点として、義体・インプラント使用者の血液および電解液に含まれる義体動作用の成分に対して非常に脆弱であり、そういった宿主の体内では生存できず直ちに死ぬ。
片目を医療用インプラントに置き換える程度の置換率でも駆虫には十分となるため、ヴィルーパに住む人間の多くは知らずのうちに寄生体に対する対策が済んでいる場合が多い。
また非義体者であっても、義体動作用電解液を調整した寄生対策のワクチンを接種することで義体利用者同様の駆除効果を得ることができる。
一方で下層での活動を行っていた企業職員経由で中・上層で感染が起きた事例があったことから、下層から上るエレベーターには卵および利用者の体内の寄生虫を判定するスキャナーが搭載され、寄生が確認された場合は直ちに検疫所で洗浄と駆虫を受けることとなる。
下層環境においては、義体利用者の遺体や中・上層からの汚染物質等から流出する該当成分によって、体外に出た成虫の多くはすぐさま死ぬ。
ただし排出された卵は耐性のある外殻を持っているため、該当成分によるダメージを受けない。
被害
宿主に対して一般的な線虫寄生による健康被害をもたらす他、下層汚染水に近い性質をした強い毒素を表皮から分泌し宿主の体内に大きなダメージを与える。
内臓へのダメージにより宿主は強い痛みを感じるため症状の自覚は容易く、またセレマテクス寄生体そのものは一般的な駆虫剤や手術によって通常の寄生線虫同様に取り除くことができるため、中・上層での発症例では発症初期のうちに治療される場合が多い。
しかし下層ではそういった治療を受けられずに死亡するケースが多発し、非義体者の体内でのみ生存するという性質もあり下層民の積極的な義体化の理由となった。
二次被害
感染者が死亡し、死体の腐敗が進行するにつれてセレマテクス寄生体は『活性化』と呼ばれる現象を起こす。
死体内で活性化したセレマテクス寄生体は体内を活発に動き回りながら産卵と毒素の分泌を続け、この卵は産卵から数時間のうちに孵化・親の分泌する毒素と腐肉によって急激に成長し、数日のうちに成虫とほぼ同じサイズとなり産卵と毒素の分泌を開始する。
これにより死体はセレマテクス寄生体の感染源、かつ毒素によって汚染された危険な腐肉と化す。
義体使用者であれば死体に近付いた場合も寄生による被害は受けないが、腐敗によって液化した組織等に含まれる濃縮された毒素は寄生の過程を挟まず直ちに健康被害をもたらすものであり、義体使用者に対しても危機になりうる。
非義体者の多く住んでいた下層セクター内での集団感染の事例ではこの『活性化』によってセクター全体が有毒の地獄と化し、セクター内や近隣の義体使用者に対しても大きな被害を与えた。
その歴史から、下層には非義体化者に対する差別意識や敵対視といった感情を向ける者も多い。
なお、活性化の起こった遺体は焼却処分がもっとも適した処理方法となる。