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ヴィルーパの病気

ヴィルーパの病気

ヴィルーパに存在する病気の一覧。

先天性/後天性工色素沈着斑模病

先天性/後天性 工色素沈着斑模病
【せんてんせい/こうてんせい こうしきそちんちゃくはんもびょう】

概要

主にヴィルーパ下層で発症する病気であり、色ツキという差別の元になっている病気。
下層は上層や中層から漏れた廃液などの影響で酸性雨が降っており、この降水や汚水などの影響で肌が黒く変色した人々のことを『黒ビト』と呼んで差別していた。
近年は流入する薬品の変化により黒以外の変色も確認されており、彼らに対する蔑称もひとくくりに『色ツキ』になっている。

原因

上層・中層の生活排水や、大規模洗浄を目的とした人工雨による汚染水を摂取、あるいは皮膚吸収することで発症する。
汚染された環境に数年間にわたり長期間滞在すると発症する病気であり、短期間であれば体の代謝などによって自然治癒されるため、接触による感染などは極めて稀なケースである。

差別の対象であり忌み嫌われている色ツキだが、免疫力が低くない限り彼らとの接触には特に問題はないとされる。

症状

薬品により皮膚が汚染されていることで、免疫力の低下や毛穴からの出血などといった身体的症状が確認されている。
また免疫力の低下などから感染症にかかりやすく、通常では発症しないような病にも罹患しうるため、発症者として侮蔑的な目線を向けられることが非常に多い。 
症状によって感染症になりやすい事や、肌同士の接触あるいは汚染水によるさらなる症状の拡大を防ぐため、レインコートなどの防護服の着用を推奨されている。

治療

先天性・後天性のいずれかによって治療方針が変わる。
後天性の場合は一時的なものであったり感染範囲が狭いことから、中層や上層の治療施設における短期治療で症状の改善が見込める。

一方で先天性のものは発症者の子供などに発現することが多く、専門の治療施設でも症状の改善は難しい。
純粋な下層民ほど体に色が出やすいことから、色ツキとして忌み嫌われる象徴のレッテルが貼られてしまう。


風化病

風化病

(通称:痛風)

概要

下層の一部区画で起こる風土病の一種。一定周期で金属の表面が分解を起こし、風化や摩耗を引き起こす。
非金属には影響がないが、これにより生体と装備の接続部分の接触不良が発生し、可動時に非金属部分を巻き込むようになる。
金属分解性バクテリアが原因のため、熱湯消毒や洗浄による処理の後、修復を行うのが望ましい。

原因

Sector 280x “Fallen City” 近郊の一部地域にて発生する風土病。
墜落した都市の一部であるCouroad社の設備「Couroadリサイクルセンター」の中で増殖・流出を続ける「汎用金属分解バクテリア “グラナーゼ”」が破損した施設から漏れ、周辺一帯を汚染していることが原因である。

グラナーゼは金属に付着すると爆発的速度で分解と増殖を繰り返し、代謝物として純金属を排出する。
これを用いて不法投棄物から資源を再利用するのが目的だったが、代謝物の金属粒子が細かすぎて回収が難しい上、結合している金属であれば全て分解するため取り回しが至難の業であった。
Couroad社はそれらの欠点から増殖プラントを含めて下層に投下したものの、その際にプラント能力は生き残ってしまった様子である。

グラナーゼは水分に弱いため、下層の大部分では雨によって死滅する。発症地域は不幸にも乾燥地帯となっているため、外部地域には拡散しない病気扱いとなっている。

症状

Couroadリサイクルセンターから吹く風速8.2km/h以上の風に乗ってグラナーゼが飛来するため、強風が発生する際には戸締りをし、家全体をビニール等で覆うことが必須。
強風を浴びた者は金属部分が激しく分解し、風化する。金属部分と有機物の接合部分の接触不良が発生して激しい痛みを生むことが多い。

浸食速度が速いため、痛みが発生してから気づくというケースも多い。
このことから、発生する地域では「痛みを風が運んできた」ということで『痛風』と呼ばれることもある。

治療

グラナーゼは風で舞い上がるが、有機物の上に落下した場合は休眠状態に入る。通常の殺菌方法で殺せるほか、有機物で表面を洗うだけでも処理できる。
罹患した患者は即座に風呂に入れ、全身を水で洗い流すのが良いとされている。


電脳性異肢誤動作症

電脳性 異肢誤動作症
【でんのうせい いしごどうさしょう】

(上・中層での通称:異肢症)
(下層での通称:あべこべ)

概要

ヴィルーパでの義体化技術が未熟であった頃から現在まで存在する、普遍的な義体不良症状のひとつ。
自身の身体感覚と付近にいる他者や設備の身体感覚が混線し、誤って動かしてしまう症状全般の総称。

過去では設計やファームウェアに問題のある製品を使用する事によるトラブル由来の症例が多かったが、現在は主にセキュリティ対策が万全でない中層~下層の義体化市民や粗悪な義体に発症し、症状そのものに致死性は無いものの滑落などの事故を誘発し死亡する事例が存在する。
中層市民の一部は、異肢症の検査時に行われるシステムの完全スキャンに伴うプライベート情報の閲覧を嫌がるあまり下層に逃亡する事がある。

原因

大きく別けて2種類存在し、旧式や粗悪な義体由来の動作不良によるものと電子ウィルス性のものが存在する。

義体由来の場合、多くは設計上の欠陥・セキュリティコードの流用などにより発生する。

電子ウィルス由来の場合不審なデータのインストールなどで感染し、感染者のセキュリティにバックドアを作成され外部操作されたり正常でない動作を誘発され発生する。
特に悪意ある電子ウィルス性である場合、視覚情報を盗み見る形で企業機密やプライベート情報を閲覧したり、危険な作業中に故意に誤動作を行わせたりするなどの重大なインシデントに発展する恐れがある。

症状

義体を動作させる際に他者の義肢を動かしてしまう、あるいは動かされてしまう。その際、自身が動かそうとしていない側の四肢を同時に動かしてしまう自己完結型の症例も存在する。
四肢に限らず視覚聴覚などの五感に症状を生じる場合もある。

機器不良によるものと電子ウィルス性のどちらにも、大きく別けて信号強度の強いマスター型と信号強度の弱いスレイブ型があり、信号強度がより強いものがマスター型となり下位の混線した対象を意図せず動かしてしまうという仕組みで症状が発現する。
また、有人義体ではない無人設備などに繋がる場合もある。

検査・診断

義体そのものが粗悪である場合、特定プログラムを使用することで容易に義体をオーバーライドする事ができるため、その可否でもって診断を行う。
電子ウィルス性のものはシステムの完全なスキャンを行うことで発見することができる。

また、電子ウィルス性異肢症のセキュリティインシデントを恐れる中層企業においては、敢えてセキュリティの甘いローカル回線で動作する産業用ロボットアームを常設し、定期的に動作させることで症状発症者を早期発見する対策を行っている。

治療

義体由来である場合はファームウェアアップデートや義体の交換を行うことで症状を回復することができる。
電子ウィルス性由来である場合はシステムの完全スキャンを行い原因部位や改竄されている部位を特定し、ワクチンプログラムを投与する事で回復することができる。

予防・治療後の注意点

義体のファームウェアは常に最新状態に保つ。怪しいフォルダやソフトウェアを安易に自身にインストールしない事で予防効果が期待できる。
稀に異肢症発症時の独特の感覚が癖になってしまい、自らの意思で異肢症を再発させる場合があるため、定期的な検査とカウンセリングが必要である。


心機疲労性不調症候群

心機疲労性 不調症候群
【しんきひろうせい-ふちょうしょうこうぐん】

概要

全身に虚脱感が生じ、主に関節に鈍痛が発生する。
また、頭痛や耳鳴り・発熱の症状も確認されているが、重症化し意識障害や後遺症が残るといった事例は確認されていない。

原因

下層から上層までの全域で広まっている。
しかし感染事例は報告されておらず、その詳細については不明である。
一説では、一過性の高ストレスに晒されると発症率が高まるという報告もある。

症状の詳細

関節の鈍痛は肘、膝関節に集中する傾向がみられる。頭痛についても個体差はあるが酷い痛みとまではいかない。
発熱についても概ね『微熱』と呼ばれるレベルの発熱が数日続く。
どの症状も、後遺症に至る事もなく、また重症化するケースも見受けられない。

検査・診断

発症して数日で完治および軽症化する為、診断による凡例が少ない傾向にある。
問診やチェックシートによる症状のチェック、および各種検査により合併症または別の症状でないかを確認する。

予防・治療後の注意点

高ストレス環境下に長期間晒される、疲労蓄積などで発症するリスクが高まる。
適度な休暇をとると同時に、偏った食事にならないように心がける。
機械生命体の場合は定期的なメンテナンスや、メンテナンスレポートを提出するよう心掛ける。

治療

重症化リスクは現時点で確認されていないとはいえ、治療をすることが望ましい。

栄養ドリンク、またはプラセボ効果を狙い抗生物質と謳った偽薬を投与。
その後1日から3日程の安静、静養に努めることでほぼ快方に向かう。

感染者への問診記録

(一部抜粋)

「その日は朝から身体がダルくてさ。病院なんてものはここにゃ無いから、大人しく寝てたんだよ。翌朝には治っちまったから、なんだったのかは分からない。」(下層住民:労働従事者)

「電圧の低下と演算処理能力が著しく低下しました。デフラグとリカバリ、数日の休眠を以って完治したことを報告します。」(上層:事務職機械生命体)


オーゲン症

原因

オーゲン症は辞書プログラムの参照ずれによって発生する。
「異星言語辞書」「偉人の言葉百科」「自然科学用語集」「上層民の振舞い:言語編」と言った辞書プログラムは数多く存在しており、人種や風習のミックスとなっているヴィルーパでは、これらを使いこなすことで臨機応変なコミュニケーションが可能となっている。
オーゲン症に罹患すると、発話の際もしくは聴取の際に受け取った情報が適切な辞書で処理されず、別の辞書を誤って参照することで本来の意図とは異なる出力となる。

参照ずれを起こす要因としては、辞書プログラムの詰め込みすぎによる迷路状態、同音異語な言語を使った際のフォーマットの誤った自動変更が考えられる。
近年多いのは「ミームによる過学習」であり、既存の言語に登録されていない意味合いや用途が更新されすぎることによる意味のオーバーフローが要因となっている。

症状

ある言語によって何かしらの“意図”を出力あるいは入力する時に、辞書プログラムによる誤変換が生じることで、意図した意味を表す言語で扱うことができなくなる。
これは自身の発話を耳で聞いた際にも適用されるため、自然に自覚することは難しい。(一応、鏡を前に発話することで自覚可能とされる。)
初期症状および未病の時点では「発話の0.1秒程度の遅れ」が主な症状となる。これは辞書プログラムの処理落ちによるものである。

商談時などの重大なコミュニケーションの際に発症した場合は地位の破滅を意味するため、なるべく早期の治療が望ましい。
なお、辞書プログラム構成が似通った人種間におけるコミュニケーションでは双方にオーゲン症が発生することがあり、誤変換の起こった発言の元の意味を互いに理解できることから、支障なく会話を続けることができてしまう。
なお、傍から見たら異常者たちが熱狂しているようにしか見えないため、症状を発見したら早めに声をかけてあげることが望ましい。

検査・治療

プログラムの不調のため、辞書プログラムの再起動で大抵の症状は治まるが、ミーム関連の場合は言語の再定義及び固定化が必要となる。
この際に用いられるのがスタンドアロン教師AI「ZAEN」であり、患者はこれに接続してシステムを走らせるだけで症状の改善が可能である。

ZAENによる固定化とは自動応答による意味の明確化であり、哲学的問答を行うことである。
ソクラテス式問答に似たことを行うため、患者はその言語の意味をZAENに納得させるまで繰り出すことになる。
意識のある状態では多大なるストレスを生じるため、治療時は意識を鎮静化するプログラムが並列して走ることになる。

この治療を受けた患者は一種のトランス状態となり、集中力の増大や判断力の向上が見出されているため、治療を受ける者の中にはオーゲン症を発症していないものも居る。

症例

  • 取引先に挨拶をしようとしたら自然科学用語集を参照してしまい、「これはDNAですね」という意味不明の発言をしてしまった。
  • 偉人の名言で議論をしていると思ったら、口喧嘩をしているだけだった。
  • 老人二人が猥談をしているように見えて、手元の紙には複雑な数式が書き連ねられていた。
  • 犬の鳴き声で話す下層の集落があるらしい。

etc…


フーバー症候群

概要

ある義肢拡張パーツを装着した過去がある者の子孫に現れる病。
親世代以前からの異常なDNAが累積することにより、異常な変異が起こる。

症状

重大な皮膚疾患、多臓器不全、四肢のマヒなど多岐にわたる症状が現れる。
主に、ある義肢およびその拡張パーツを装着した人物の子孫に見受けられる病。新生児にも発症し、その影響で母体にまで影響を及ぼし死に至る場合がある。

原因

義体普及の黎明期、当時の義肢の操作性は現在のものと比べると低く、また個人差や製品ごとの差はあるが義肢装着時のパフォーマンスが生身の身体に比べ最大50%近く低減することが確認されていた。

そこで義肢との親和性を高める目的で、脊髄に外科手的に接続することで生身の身体と義肢を相互に接続・既存の脳内のスペースを新たな義肢専用の領域として置換するブースターが開発された。
当初このブースターは好評を博したが、義肢との親和性問題は製造技術の向上や一部メーカーのオーダーメイドへの遷移などで時間の経過とともに解決され、このブースターはある時期を境に姿を消す。

数十年後、新生児の腕や足に本来自然に排出されるべき毒素などが溜まり、処置が早ければ恒久的な皮膚疾患、最悪の場合では手足が壊死するという症状が各地で一斉に蔓延した。
初めは何かしらの薬物などによる疾患かと思われた。その3年後調査が進展し、症状を発症した新生児の祖父母世代が何かしらの形でブースターを利用していたことが判明する。


ブースターを装着した者はこの装置によって義肢と脳が接続されるが、実際は義肢と身体の親和性向上だけではなく、義肢の自己再生機能がブースターには付与されていた。
検証段階だった自己再生機能は脊髄のDNA構造に干渉することで、後付けされた義肢を本物の四肢のように傷や不具合を修復するよう作用するはずだった。
しかし自己再生するにはその機能と互換性のある義肢の開発も必要であり、こちらは資金難のため開発が進展しなかった。

ブースター側の自己再生システム自体は発売前の段階ですでにほぼ完成していたが、このことは経営陣の一部と開発部門のスタッフのみが知る機密とされ、発売時の広告には「義肢との親和性向上」との謳い文句だけが載ることになる。

一方で未完成の部分が残されたまま発売されたブースターには不具合があり、本来停止していたはずの自己再生機能が親和性向上機能を経由して作動することで若干のDNA改変を行っていた。
そしてそれは親から子へ世代を経るごとに累積し、現在では修復不可能なものとなっている。

検査及び治療

症状の発覚から処置までが早ければ皮膚に後遺症が残る程度で済むが、根本的な治療は難しい。
長期のゲノム治療を行うことで除去が可能。


セレマテクス寄生体

セレマテクス寄生体 – Ascaris Verbum Textura

(下層での通称:「生身喰い」「毒肉虫」)

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概要

ヴィルーパに生息する有機生物(宙域生物学定義O-2項に則る)に感染する寄生虫。
惑星外より持ち込まれた線虫の一種がヴィルーパ下層の汚染水源に住み着いたことで変異を起こしたものが起源とされる。外で見られるものはその殆どが卵であり、成虫は後述する弱点もあり宿主から離れた状態で見られることは少ない。

寄生経路および繁殖と対処法

寄生経路は食品に卵が付着している等して起きる経口感染であり、寄生後は主に腸内に住み着いて成虫となり、宿主の栄養を血液から摂取して生存する。
成虫は宿主の腸内で産卵を行い、それが排出されることで卵を宿主の体外へと拡散させる。

成虫の大きな弱点として、義体・インプラント使用者の血液および電解液に含まれる義体動作用の成分に対して非常に脆弱であり、そういった宿主の体内では生存できず直ちに死ぬ。
片目を医療用インプラントに置き換える程度の置換率でも駆虫には十分となるため、ヴィルーパに住む人間の多くは知らずのうちに寄生体に対する対策が済んでいる場合が多い。
また非義体者であっても、義体動作用電解液を調整した寄生対策のワクチンを接種することで義体利用者同様の駆除効果を得ることができる。

一方で下層での活動を行っていた企業職員経由で中・上層で感染が起きた事例があったことから、下層から上るエレベーターには卵および利用者の体内の寄生虫を判定するスキャナーが搭載され、寄生が確認された場合は直ちに検疫所で洗浄と駆虫を受けることとなる。

下層環境においては、義体利用者の遺体や中・上層からの汚染物質等から流出する該当成分によって、体外に出た成虫の多くはすぐさま死ぬ。
ただし排出された卵は耐性のある外殻を持っているため、該当成分によるダメージを受けない。

被害

宿主に対して一般的な線虫寄生による健康被害をもたらす他、下層汚染水に近い性質をした強い毒素を表皮から分泌し宿主の体内に大きなダメージを与える。
内臓へのダメージにより宿主は強い痛みを感じるため症状の自覚は容易く、またセレマテクス寄生体そのものは一般的な駆虫剤や手術によって通常の寄生線虫同様に取り除くことができるため、中・上層での発症例では発症初期のうちに治療される場合が多い。
しかし下層ではそういった治療を受けられずに死亡するケースが多発し、非義体者の体内でのみ生存するという性質もあり下層民の積極的な義体化の理由となった。

二次被害

感染者が死亡し、死体の腐敗が進行するにつれてセレマテクス寄生体は『活性化』と呼ばれる現象を起こす。
死体内で活性化したセレマテクス寄生体は体内を活発に動き回りながら産卵と毒素の分泌を続け、この卵は産卵から数時間のうちに孵化・親の分泌する毒素と腐肉によって急激に成長し、数日のうちに成虫とほぼ同じサイズとなり産卵と毒素の分泌を開始する。
これにより死体はセレマテクス寄生体の感染源、かつ毒素によって汚染された危険な腐肉と化す。

義体使用者であれば死体に近付いた場合も寄生による被害は受けないが、腐敗によって液化した組織等に含まれる濃縮された毒素は寄生の過程を挟まず直ちに健康被害をもたらすものであり、義体使用者に対しても危機になりうる。

非義体者の多く住んでいた下層セクター内での集団感染の事例ではこの『活性化』によってセクター全体が有毒の地獄と化し、セクター内や近隣の義体使用者に対しても大きな被害を与えた。
その歴史から、下層には非義体化者に対する差別意識や敵対視といった感情を向ける者も多い。

なお、活性化の起こった遺体は焼却処分がもっとも適した処理方法となる。


風邪

概要

ここでは特に、義体化した者やアンドロイドなどが罹患するものを指す。感染すると一般的な風邪と同様、発熱・倦怠感などの症状をもたらす。

発症に至るメカニズムは様々だが、多くの場合は機械化部分のハードウェア脆弱性を突くマルウェアによるもの。電子戦の踏み台作成や情報マイニングなどを目的としたそれらが入り込むことでシステムに負荷を与え、風邪に類似した症状として不調が誘発される。

治療

治療の際は普通の風邪と同様の処方薬による対症療法に加え、義体のファームウェア更新や再起動による自己診断などで異常が除かれることで完治する。

本来のそれと症状が似通っていること・また原因が様々で特効薬と言えるものが無いことなどの類似点から、有機生物が罹患するそれと同一視されて「風邪」と呼ばれるようになった。
きちんと予防するのが一番とされる。


なお、多くのマルウェアは義体やアンドロイドの計算・通信リソースなどを目的に活動する。よって演算能力の低い端末はターゲットになりにくく、結果として「風邪」の発症率も著しく低い傾向にある。

馬鹿は風邪をひかないということだろうか。


メカニカ症

メカニカ症 – Mechanization Disease
【めかにかしょう – メカニゼーション ディジーズ】

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概要

元々は宗教組織O_RMECHAの一部のメンバーにより、下層から出る死体を機械化して労働や資源に有効活用できる方法はないかと開発されたナノマシンウイルス。
ウイルスから分泌される特殊な成分により体内の細胞をカーボンや化学繊維に次から次へと置き換えていく。その際に神経も素早いスピードで置き換わっていき、痛みを感じず感覚がなくなっていくので病気の進行に気が付きにくいのも特徴である。
置き換わったパーツ類は最適化されておらず、従来の生身の体よりパフォーマンスは低下する。

感染経路

ウイルスに感染した人の血液や分泌液・体液・臓器に皮膚の傷や粘膜を通して直接接触することで、人から人に感染が拡大していく。

症状

ナノマシンウイルスによって、体の組織を感染原の箇所から機械的な組織構造に置き換えられていく。その進行スピードは約2週間程度で全身に進行する。

脳に到達した場合は進行が遅くなり、そこからさらに1週間程度の進行スピードで組織が置き換わっていく。
その際に強烈な睡魔が症状として現れるが、これがメカニカ症で唯一感じることができる症状である。そのまま睡魔に襲われ昏睡状態になり、脳も完全に機械組織へ置き換わる。

置き換わった後、約100人に1人の割合で昏睡から目覚めることが報告されているが、その意識が元の人間のものか別のものかは不明とされる。

治療

現在のところ、機械化した組織を元に戻す方法は解明されていない。感染したら即座にウィルスを死滅させる方法が有効である。
現在の個体は電磁パルスに非常に弱く、軽量なEMP照射機によって簡単に死滅させることが可能であると報告されている。

その特性から希少で管理が難しいウィルスであるが、サイボーグ化願望を持つ一部の人々によってウイルスが流出・悪用されている事例が下層にて報告されている。

  • 後に引けなくなったものが自分の体を資源にして金銭に交換しようとするケース
  • 機械化したいという願望から自ら感染するケース
  • 末期の病気に侵された部分を機械に無理やり置き換えようとするケース


作字毒症

作字毒症 – Disgraphitoxic
【さくじどくしょう – ディスグラフィトキシック】

概要

作字毒症は、生体脳・人工脳・中枢情報体への神経 / 電子伝達阻害による、文字情報の認識異常および書字行為の阻害を起こす病気。
ヴィルーパ上層で発見され、観測者が複数人の発症者を出しながらもこれを観測した。

原因

初期感染源は12枚綴りの紙で、作字毒症についての調査報告書の体裁をしている『作字毒症報告書』という文書。
読み始めると(頻度は人によってまちまちだが)徐々に読みにくい文字が出現し、それを気にして読んでしまうことでさらに症状が進行する。
気にしはじめて読み進めると、読みにくい文字よりも存在しない文字が頻出するようになり、報告書の最終ページに辿り着くころには全ての文字が存在しない文字に置き換わる。

さらに、報告書を読み切ってしまった場合は周囲の文字も同様に存在しない文字に置き換わったように認識し、文字の認識が正しくできなくなる。
感染者が書字した文字もまた認識できない文字になり、それが一般感染源になる。読んでしまった人物は作字毒症に感染する。

上層・中層では感染源になりうる媒体が多いことから甲種情報感染症として非常に警戒されており、感染者は専用設備に隔離され治療が施される。
下層では媒介するような文字情報は少なく、薬物の影響下にあるのか感染しているのか不明瞭なため放置されがちである。
ただし下層でほとんどパンデミックにならないのは、感染者・非感染者の別を問わず、文字情報を残す前に他の要因で死亡することが多いためだといわれている。

症状

主な症状には文字情報認識障害・書字行為阻害がある。
スムーズにコミュニケーションが行えなくなることが多いため、社会的行動障害も副次的な症状となる。

感染者が生身であれば生体脳に異常を、サイボーグやアンドロイドであれば人工脳に影響を及ぼす。
電子生命体の場合は中枢情報体に影響を及ぼすことがわかっている。
また感染者同士のコミュニケーションは不可能であり、解読も不可能とされる。

検査・診断

問診により文字情報認識や書字行為に問題がないか検査する。
日常生活において文書閲覧時の混乱・異常が疑われる場合は、早めに医療機関で検査を行う。

治療

生体脳には投薬治療が、人工脳・中枢情報体では電気刺激が主に用いられている。
投薬治療には神経伝達物質受容体刺激薬、並びに遷移系環状誘導体の投与が推奨されている。
電気刺激では、損傷した人工脳電子回路に低頻度電気刺激を加えることにより、電流増加作用や電子ネットワークの改善が認められている。
また、発症初期の生体脳限定ではあるが言語・聴覚のリハビリ療法により症状が改善したとの報告もある。

重度まで症状が進行してしまった場合は記憶処理が主な治療法となるが、強力な記憶洗浄剤であるTCEP受容体作動薬を使用するため慎重に判断する必要がある。

生体脳
軽度:投薬、リハビリ
中度:投薬、電気刺激、記憶処理
重度:記憶処理

人工脳・中枢情報体
軽度:電気刺激、ファイル整合性チェック
中度:ファイル整合性チェック、言語ソフトウェア再インストール
重度:言語ソフトウェア再インストール、記憶処理


『作字毒症報告書』とは、もともとは下層にて発見されたオーパーツ『裁断印刷機』と同時に発見された文書である。
オーパーツ『裁断印刷機』は一つの文字に複数の情報を詰め込むことにより、文字情報を圧縮することを目的としていたようだ。

当初は大発見であったが、圧縮された情報を読み解くことができず、何人かの研究者が錯乱状態に陥ったためオーパーツおよび生成物は危険と判断され破棄された。(錯乱状態に陥った研究者たちはTCEP受容体作動薬の投与により復帰している。)
また、チップのようなものも多数発見されたが、現行のヴィルーパでは使用していない規格であり読み取ることができなかったため、こちらも破棄されている。

しかし一人の研究者が無断で文書を持ち出していたため、作字毒症は上層で感染拡大することとなった。


オーパーツ『裁断印刷機』

古代ヴィルーパにおいて開発された文字情報圧縮機。文字情報を圧縮して情報量を高めることにより、思考の加速を目指した。
文字情報を「裁断」して、その中に複数の情報を詰め込んで圧縮し「印刷」する機械。

製造当時は圧縮文字を展開・解凍するためのチップ『紡績書片』も同時に開発されていた。
『紡績書片』なしに解読することは不可能になっている。

圧縮文字に適応した人物は電子情報や紙面関係なく、なんらかの文字情報を書いたり入力したときには、その情報が全て圧縮文字になる。
圧縮文字に対応できるよう、当時ヴィルーパの電子機器には初期段階においてプラグイン『拡散鏡』がインストールされていた。
ただし『拡散鏡』がない環境では正しく認識できない文字となる。

一方で『紡績書片』などを使用した状態でも圧縮文字を読み込む行為には思考器官に相当の負荷がかかることがわかり、徐々に慣れさせていくために幾つかの種類のテスト文書(サンプル)が作成された。
テスト文書は読み手に合わせて、レシピ集や辞書といったバージョンも存在する。またそれらは興味を惹きやすい文書で、読んだ人物の圧縮文字対応レベルに合わせて変化するように生成されている。
すべて読むことにより、すべての圧縮文字に対応できるようになる。

しかし結局のところ圧縮文字は一般受けしなかったため、『裁断印刷機』とともに開発中止となった。

なお、研究者向けに作成されたテスト文書の一つに『作字毒症報告書』というバリエーションが存在したが、これは架空の病気であり、当時のヴィルーパに作字毒症という病気は存在していない。