人工季節
《概要》
公転・自転といった通常の惑星運動に縛られない星間航行が可能なヴィルーパには、季節という概念は本来なら存在しない。
しかしそれは惑星改造の完了したヴィルーパがそれまでの公転軌道を外れた星暦1000年代以降のことであり、星間航行の開始からまもなく感覚的な時間経過の指標がなくなったストレスを原因とする精神疾患が社会問題化し始めた。
また、惑星改造期の移民達によって持ち込まれた他星系の文化も1000年近い時を経て形を変えながらヴィルーパに定着しており、そこに含まれる季節行事・年中行事といった側面からも「季節の再来」を望む声が多く上がるようになっていった。
このことから当時の政体によって限定的ながらも対策が講じられたといわれ、現在はかつてヴィルーパが恒星系にあった頃の暦を再現して四季が巡るように制御された地域が存在している。
《性能》
天蓋や気候制御装置などの設備を調整することで人工的に季節が移ろうよう制御しており、ヴィルーパ自体が置かれた宇宙環境による影響はあるものの概ね1年で四季が巡るようになっている。
一般的な人口季節の制御下における気候はその時の季節感を感じられる程度の変動にとどめられ、どの季節であっても快適に過ごすことが可能なよう配慮されている。特に上層では世間の情勢や政治・経済などへの影響を考慮して計画的に天候が決定され、「天気予定」として1~2週間単位で発表・運用されている。
具体的な天候まで含めて人工季節が十分に制御されているのは、(研究や環境保護目的などの特殊区画を除けば)上層全域と中層のごく一部に限られる。それ以外の地域では生命維持に支障がないよう環境の安定化が行われるのみで季節までは保証されないが、上層を基準とした季節・気候の制御による揺らぎを受けることで天候が変化することもある。
下層や外殻近くといった地域における人口季節の恩恵はさらに薄く、中層を介した気候の揺らぎや上層の季節感にもとづく企業・工場の操業状況、外殻を隔てた宇宙空間の状態などによって環境を大きく左右される。条件によっては極限環境のような様相を呈する場合もあり、ヴィルーパにおける層ごとの差別を広げる一因ともなっている。