神昇りの桜
概要
中層のとある宗教団体の本部に植えられている桜の木。
通常の桜の木と変わらない見た目をしている。大きさからして、最近植えられたものではないが、周囲の土には最近掘られた形跡がある。
桜の木の根本を注意深く観察した結果、2冊の手記が発見された。
1冊の表紙には、我々観測者と同様のシンボルが確認できる。
もう1冊はシンプルなノートである。中を確認した結果、この桜を神格化している宗教団体の教祖が書いた日記らしい。
桜の周囲を調べるために少し土を掘り返した所、ごく最近埋められたようらしい死体を発見した。
見た所どこにも欠損がないようだが、重さを計測してみた所、生きていた頃の推定体重と比べて30g程少ない結果が出た。
更に周囲を掘り返すと、やはり同じような死体を発見した。こちらも同じように重さを計測すると、先の死体と同じ結果が得られた。
なぜこのような結果が出たのかラボに帰って考えてみたが、どうやらこの桜は「埋められた死体から何かを奪い取る」性質があると推測した。
桜は常時満開のようだが、「死体から奪った何か」を養分にしているのではないか?一体何を奪っているんだ?
そして・・・
死体を埋めているようだが、この宗教は何を目的に死体を埋めているのか?
調査が必要だと考えられる。
手記
ある宗教団体の手記(教祖が書いたものだと思われる)
○日
今日、職員が過労で亡くなってしまった。
金は潤沢に与えたのだが・・・ 悔やんでいても仕方ない、この問題が明るみになれば我社は終わりだ。
私が死体を発見したのが幸いか。
隠蔽案を思いつくまで地下室に安置しておこう。
―――裏山に枯れた桜の木があったな。
×日
あの死体は桜の木の根本に埋めておいた。
隠蔽は成功したようだが、どうにも死体の様子が気になる。
手早く業務を終わらせて見に行こう。
△日
―――死体がない。
誰かに掘り返されたか?しかしそのような跡など見当たらない・・・
まあいい、勝手に消えたことにしよう。
しかし、死体を埋める前より木が元気になっているように見える。
隠蔽が成功したし、私も清々しい気分だ。
◎日
今度は反抗してきた輩を殺してしまった。
クソ。
私は我社を大きくするために・・・なぜ分からないのだ。
全く、また埋めに行かないと。
××日
今日も死体の様子を見に来てしまった。
また死体がない。それに桜の木も前回見に来た時より元気になっている。
もしかして・・・
―――確かめてみるか。
▽日
今日、集合住宅の遺体処理の依頼が入った。
どうやら集団自殺らしい。
好都合だ。 遺体は私が回収し、あの桜の下に埋めることにしよう。
依頼者への報告書類には「土葬」とでも書いておくか。
▼日
桜の様子を見に来た。
勿論埋めた物は発見できなかった。
桜の木は三分咲きのようだ。
小さく咲いた花を見ていると、私の気分も晴れ渡るようだ。
そうだ、この桜を育てよう。
今迄のようにチマチマと埋めているのでは桜は喜ばないだろう。
土地を買収し、そこに立派な建物を。
この桜を神と崇める宗教を。
―――――全ては、神を咲かせるため―――――