下層の食べ物
Бог Смерти(ボーク・スミェールチ)
アンドロ芋
ベロボグサンド
配給で行きわたるサンドイッチの一種。
合成デンプンとタンパク質(グルテン)を混ぜたものを水で練り整形して焼いた生地に合成肉と調味料を塗り付けてサンドしたもの。
決して不味い訳ではないが、とりたてて美味という訳でもない、無感動な味。ただし栄養価は優れている。
「…美味しくない。」—とある局員
合成肉
化学的に合成された人工品の肉。
大抵はシート状に加工したものが販売されており、咀嚼することで微かなうま味を感じることができる。
2年以上放置しても腐敗することがなく、危険な保存料の使用が疑われている。
長期間の採掘へ向かう際の非常食や酒の肴、子供のおやつ等によく利用されている。
エナジードリンク「ツングースカ」
下層で流通しているらしいエナジードリンク。
強烈な炭酸と違法ではない程度に含まれる覚醒成分が中毒者を生み出している。
この飲料とボーク・スミェールチを混ぜたカクテルは、強い幻覚・幻聴・錯乱作用があるため非推奨とされるが、違法性はないとされている。
アブラマスタケ
季節を問わず下層に分布するキノコ。
形は半円形~扇形でフチの部分は波をうったようなうねりが見られる。大きさは10~30cm程で、群生はしない。
名前のとおり可燃性の粘液に覆われており、火をつけるとゆっくりと燃える。
この特性から広く照明として利用され、また粘液を抽出し粗製燃料としても取り扱える。
味は悪くなく、むしろ柔らかい歯応えととろりとした粘液、そしてかすかな甘みが「上質な牛肉」を思わせるほど美味である。
しかしこの粘液は人体が消化できないワックスエステルの一種であり、食後おおよそ30~1時間後に鈍い腹痛を催し下痢などの症状が半日ほど続く。
致死性ではないため、食べる者が後を絶たない。
近年、新種のアブラマスタケとして揮発性と発火性が極めて高い種が確認され、こちらはかすかな熱源で激しく燃焼する。
下層ハーブ
通称「薬用野草」とよばれる、下層にて見付けることができる希少なハーブの一種。
詳しい生態系や繁殖方法は未解明。
さまざまな内的病気に有効であることから、上層では病薬として重宝されている。
希少ではあるが、水辺・路面・屋根裏などあらゆる場所に生えるため、上層に比べ下層での価値は低い。
超孔礼渡(チョウコウレイト)
超孔礼渡は「ちょうこうれいと」または「ちょうこうれいど」と読み、渡来時の訛りによりどちらも正しいとされている。
通称としては「チョコ油」が使われている。
超孔礼渡は約200年前にヴィルーパ外から商業船によって持ち込まれた樹木、及びその果実を言い、チョコ油と言えばその果実の醗酵油のみを指す事が多い。
機械生命体の星間行商人が「土と水と光さえあればどこででも育つ!果実は腐らせれば良質な油になる!」と売り込んだものである。
枝葉を付けず縦に伸び、幹に空いている大量の孔の内部で光合成をし果実を実らせる。
果実は道具を用いなければ割れないくらい頑丈な外皮に覆われているが、腐ると果肉が溶けて油になり、外皮はそのまま容器として扱えるため通常は外皮ごと果実を保管し、使用時外皮に孔を空けて使用する。
渡来から150年間は下層であろうと土・水・光さえ揃えば放置しても油を調達出来る植物として工業用油供給用に栽培されてきた。
ときおり興味本位で果実を口にする者もいたが、土や水から吸い上げた毒素と強烈な酸味により数日間嘔吐を繰り返すため約50年前までは食用不可として扱われていた。
しかし、約50年前に下層の一部セクター群で起こった大飢餓の際、超孔礼渡の実で飢えを凌ごうと試みる者が多発し、その際嘔吐を繰り返す者達の中に一部幻覚や多幸感を訴える者もいた。
大飢餓終息後、現地の実効支配者が超孔礼渡の実を調査したところ、果肉ではなく実の中央にある球状の種子が可食である事、種子の色の濃さに比例した幻覚作用がある事が判明した。
実効支配者が種子を薬物として流通させた際D.G.に摘発され、超孔礼渡の危険性が露見。ヴィルーパ全体で原則無許可での栽培を禁止し、研究機関や産業利用栽培のみを目的とした有資格者による栽培のみが現在は行われている。
研究機関の調査により、果肉や種子に土壌及び水から吸い上げた毒素を濃縮している事、毒素が無ければ種子は白くなり、毒素が濃ければ黒褐色になる事が判明。
無毒化した超孔礼渡の種子は白く、外皮の薄っすらした苦さと中身の甘さが伴い依存性の強い甘味となる。
上層・中層はもちろん下層ですら色の白黒に関わらず流通禁止の禁制品となったが、上層のどこかでは愛好家が夜な夜な愉しんでいるといううわさが数十年前から中層・下層でときおり流れている。
下層で採取された、有毒な黒褐色の種子は、外皮の壮絶な苦さと中身の形容し難い甘さで生半可な味覚は破壊され、強烈な幻覚作用により脳の幸福感を感じる器官すべてが悲鳴をあげる多幸感を数分間与えたのち、強烈な嘔吐感と頭痛を数日間与える。
驚異的な依存性を持ち、興味本位で口にした者の多くが半月と経たず中毒症状で落命する。
比較的美味な味とは裏腹に、下層の薬物中毒者ですら「チョコの種をやるようになったらおしまい」「命が惜しければ真っ黒なチョコの種だけは食うな」と口を揃えて言う程に依存症状は重く、致死量は少ない。
現在は超孔礼渡の種子を指した隠語「白種・茶種・黒種」と、中層・上層にて流通している超孔礼渡の種子をモチーフにしつつ超孔礼渡の種を一切用いずに開発された安心安全な高級甘味菓子「チョコ・チョコレート」の2種類がヴィルーパには存在している。
近年は種子の方を指して「チョコ」と呼び、あえて混同して扱う下層民の存在が中層・上層で「チョコ」を楽しんでいる愛好家やチョコレート料理人達の頭を悩ませている。
ヴェストル
とある調査隊が下層へ探索した際に偶然出会った植物の種子。
『世界を変えるようなオーパーツ』という無理難題を押し付けられ、無茶な行軍を続けた結果、犠牲者が何人も発生し、携帯食のストックもあと僅か…… リーダーが士気を鑑みて、切り詰めた食事に少しでも変化を、と思いその場にあった植物の種子をすり潰してスープに加えたところ、何とも言えない複雑な味となり一行を魅了した。
調査はその場で打ち切られ、隊員はポケットが破れそうになるまで植物を詰め込んで帰還した。 なお、その際に半数が死傷している。
調査チームはこの植物を探索の成果として発表、出資者は料理に舌鼓を打ち、追加の出資の確約と継続的な調達を命じた。
なお、当該植物は何度か下層住民が試食を試みているが、「ノイズみたいな味がする」「ちゃんと味がわかる食べ物が喰いたい」と不評であった。
下層で生育する植物の一種。
大抵土の中で種子として休眠しているため、表面の重金属汚染された土壌を除去すると発芽し生育する。
生育条件は中性の土と適度な水分、それと適度な重金属汚染が必要。
探索チームが辿り着いた地点は、下層では珍しく雨が少ない地域であり、そういった場所では繁殖力が強い。
重金属の種類や濃度によって風味が異なるため、最適な条件の同定には困難を要する。
種子は油でテンパリングをすると芳しい香りを出し、粉末は振りかければ刺激を与える。オススメの調理法は炒め物。
流れ着いた地球人が食したところ、ブラックペッパーの香ばしさとスターアニスの甘い香りやカラシの辛味がするとのこと。
ヴィルーパタンポポ
ヴィルーパ全域に広く分布する植物。
非常に生命力が強く、下層では配管やコンクリートの隙間にも生える。
食べ物として非常に優秀であり、花は薬効成分を含んでおり、沈静、利尿、整腸作用がある。
根は掘り起こして乾かし煎じて薬にしたり、焙煎することでコーヒーの代用品にもなる。
上記のようなさまざまな効果・効能があるため、下層では薬用・食用として広く親しまれている。
ガスカズラ
下層での性質
下層ではガスカズラ とよばれる。
汚泥等の有機物で汚染された土壌で育つ。
土中の有機物を分解しエネルギーとして育ち、副産物の可燃性ガスを袋状の果実部に蓄積する。
果実の成長につれてガスの溜まった萼(ガク)、栄養の詰まった果実・種子部分が分かれていく。
完熟すると果実がガスによって浮かび上がり、空中を浮遊。一定の高度で萼が破裂し、果実は新天地に種子をばらまく。
果実部の味自体はフルーティであるが、可燃性ガスが溶け込んでいるため、萼を開いた瞬間から悪臭が漂う。
ガクを割った際の爆発事故が時々発生するため、ガスカズラ と呼ばれ注意喚起がされているが、貴重な甘味のため中身を食べようとした際の事故が絶えない。
上層での性質
上層ではミツカガチ とよばれる。
ある程度の肥沃な土地であれば育つ。
有機肥料をあげればあげるほど果実部は大きく育つが、ガスが貯まらずに果実だけが大きく育つのが特徴。
上層で下層のように浮かび上がる果実を再現しようとするのは至難の業であり、如何に上手に飛ばせるかを競うコンテストが開かれている。
味は下層のものより甘味が強く、悪臭がほぼ無いため、ミツカガチ の名称で親しまれる。
クズノコ
下層のどこにでも生えるタケノコに似た植物。
鉄屑やスクラップなどから鉄分を吸収して生育するため、外皮が非常に硬く切断することが困難である。
しかし、硬い外皮の下には可食部があるため、食用として収穫されている。
名前の由来は、「そのまま育つと折れて鉄”クズ”になるからクズノコ」と言われている。
虹菜
下層の油溜まり周辺で生育するハクサイに似た葉物野菜の一種。
ハクサイのようなシャキシャキとした食感はなく、どちらかといえばコンニャクのような食感がする。
油分を多く含んでおり、調理の際にしっかり油抜きをしなければ人体に影響が出るほど。
その絞った油は燃料の一種として注目されている。
ボイ土筆
夢幻豆
下層で食べられているマメの一種。むげんまめと読む。
幻のようなくちどけで、無限に食べられそうなのでこの名前がついたとされる。
実際は異常なほどカロリーが高く、一つ食べれば十分である。
だいたい缶詰に加工され流通している。
テッセンカヅラ
下層の鉄屑が混ざった土壌で生育するツル系の植物。
土壌の鉄分を多く吸収し、針金の様に硬いツルをのばす事からこの名前で呼ばれることになった。
実は表面の金属外皮以外の部分は食べることができる。
その性質から鉄分豊富なため、貧血に効く食材として親しまれている。
ツルの部分は工具を使用しないと切断が難しいほど硬いため、天然のフェンスとして土地の境目で栽培されている光景をよくみかける。
グラスエンドウ
ヴィルーパ全域に生息するマメの一種。
石英が多く含まれる地域のものは、サヤが透明のいわゆるガラス質状になる珍しい特性を持つ。
このガラス質のものは、サヤがパキッと心地よい音を立てて割れるが食用に適さず、中の豆を取り出して食べる。
石英の少ない地域のものはくすんだ緑色のサヤになり、食用もできる。
ガイトウダケ
下層に生息するキノコの一種。
真空状態にすると強い光を放つ性質があり、真空状態の透明容器に封入し暗いところを照らすのに使われる。
あまり食べられるように見えないが可食である。
カソウアブラタケ
下層に自生する植物。
凄まじい繁殖能力を持つうえ、多量の油を生成し内部の空洞に溜め込む性質がある。
油は根元に近い部分で生成されており、古くなった油や不純物は上の節へと送られる。
そのため根元付近の新しい油は可食できるのに対し、上部の油は石油の様な成分になり食用には適さない。
下層ではよく根元の油を食用油として使う事が確認されている。
節の部分が厚いため、上手く切り出せば持ち運びもしやすいが当然ながら火気厳禁である。
ヤコウコバチ
非常に薫り高く、上層ではヤコウコバチ(夜煌小鉢)といわれ秋の味覚として楽しまれているキノコ。
流通量が非常に少なく上層市民にとっても非常に高値で取り引きされる。
メディアでも例年取り上げられるほどに認知度の高さではあるが、その栽培・収穫方法を知る上層市民は少ない。
ヴィルーパ下層に自生するキノコ。
下層ではヒカリテンバンタケとよばれる。
大きさ5~10cm程の子実体を形成し、皿型の傘を持ち表面の粘性はない。その特殊な生育条件により常時帯電しており、ハンターからは「下層の唯一生きた星」と揶揄されることも。
劣化した天板液晶を菌床に群生するため収穫難度が非常に高く、年間数件の死亡事故を起こしている。
しかし、買い取り価格が非常に高く(もっとも高値のモノでは一株で下層の生涯年収を超える値が付くことも)、一攫千金をめざすハンターが後を絶たない。