下層のシステム
反重力車
下層の街の名称について
下層の街は指定された名称があり、そのすべては管理区域としてSECTOR-XXXX(XXXXは数字)という名称で統一されている。
基本的にその区域にある特別な施設や管理番号、土地の性質が一目でわかるように割り振ったなどの理由から、連番で設定しているのではなく単純に数字を割り当てている。(仮に50000番があっても50000区画あるわけではない。)
ただこの名称はあくまでヴィルーパを管理する側での呼び名であり、中層・上層の人間にはこちらのほうがなじみが深い。
現地を知る人間(下層住まい、情報屋など)同士は、土地の特性や成り立ちなどさまざまな理由によって名付けられた「通称」を用いる。
これらは時に暗号にも使われていることがある。
例として、『「常闇の街」は直近の深層にある何かが原因ですべての光源を奪われた都市で、立ち入り禁止区域となっているが、一部の人間が姿を隠すのにはちょうどいい。』などがある。
極冬(きょくとう)
ヴィルーパで数年に一度発生する異常気象 。
恒星のもたらす宇宙嵐 に対しヴィルーパの航行システムは天蓋や重量制御リングによる防御手段を有するが、各システムのメンテナンス期間に宇宙嵐が重なったり、防御機構の受け切れる限界以上のダメージを受けた場合、気候制御装置や天蓋の機能不全 が起きる。
これによりヴィルーパ全域が宇宙の圧倒的な冷気 に晒され、雨の降る地域は朝から晩まで絶えず雪の降る極寒の世界と化す 。
この状態は1~2ヶ月かけ各システムの復帰を完了するか、ヴィルーパ自体を恒星に近付け気温を上昇させる等の対策をとるまで続く。
極冬中のヴィルーパは非常に厳しい環境となるが暖房装置や体温維持装備は通常通り機能する ため屋内への影響は小さく、また上層では街道上に点々と暖房装置を配置することで極冬の影響をほぼ無効化している。
中層民は一日の大半を屋内で過ごし冷気を凌ぎつつ、「冬」という普段は上層民しか味わえない非日常 を各々楽しんでいたりする。公園に小規模な人工雨装置を設置し、降雪を楽しみながら各企業の設営を見て回る企業協賛のイベント「ヴィルーパ雪まつり」は中層民にとって極冬の醍醐味である。
ただ、下層にとって極冬は何一つ楽しめるものではない 。酸性雨の凍った有害な雹が降り続ける中、暖を取る手段もまともに用意できず衰弱してゆく下層民は多く、また狭い路地に冷気の流れが乱されることで人が凍り即死するほどの冷風が吹き荒れることもある。劣悪な下層の環境はさらに致命的なものとなり、そのため下層民にとって『季節』とは死の象徴である 。
Sector 280x “Fallen City”
下層に存在する、いくつかのセクターにまたがった地域の総称。
このセクター番号はかつて中層に存在し、ヴィルーパでも有数の規模を誇った大都市を指すものである。しかしその利権を求めた企業間の対立が激化したことで経済が摩耗・停滞し、どの勢力も採算が見込めない不良債権となりつつあった。
そこで利害関係にあった企業の間で秘密裏に取引がなされ、全ての勢力が治安の悪化を名目に都市を放棄することで合意。各勢力が抱える“黒歴史”をまとめて抹消するため、中層の複数セクターにまたがる規模の都市全域を、地盤プレートごと下層へ『処分』する破壊工作が行われた。
結果として“大規模崩落事故”により下層に場所を移したその都市は、荒廃しながらも当時の威容と面影を残しており、今なお中層にあった頃のセクター番号で呼ばれている。
またその類を見ない崩落規模や経済的メリットの薄さから地盤の補完工事は進んでおらず、都市上空の広範囲が上層のプレート底面まで吹き抜けとなったままの稀有な景観を持つ地域でもある。