極冬(きょくとう)
ヴィルーパで数年に一度発生する異常気象 。
恒星のもたらす宇宙嵐 に対しヴィルーパの航行システムは天蓋や重量制御リングによる防御手段を有するが、各システムのメンテナンス期間に宇宙嵐が重なったり、防御機構の受け切れる限界以上のダメージを受けた場合、気候制御装置や天蓋の機能不全 が起きる。
これによりヴィルーパ全域が宇宙の圧倒的な冷気 に晒され、雨の降る地域は朝から晩まで絶えず雪の降る極寒の世界と化す 。
この状態は1~2ヶ月かけ各システムの復帰を完了するか、ヴィルーパ自体を恒星に近付け気温を上昇させる等の対策をとるまで続く。
極冬中のヴィルーパは非常に厳しい環境となるが暖房装置や体温維持装備は通常通り機能する ため屋内への影響は小さく、また上層では街道上に点々と暖房装置を配置することで極冬の影響をほぼ無効化している。
中層民は一日の大半を屋内で過ごし冷気を凌ぎつつ、「冬」という普段は上層民しか味わえない非日常 を各々楽しんでいたりする。公園に小規模な人工雨装置を設置し、降雪を楽しみながら各企業の設営を見て回る企業協賛のイベント「ヴィルーパ雪まつり」は中層民にとって極冬の醍醐味である。
ただ、下層にとって極冬は何一つ楽しめるものではない 。酸性雨の凍った有害な雹が降り続ける中、暖を取る手段もまともに用意できず衰弱してゆく下層民は多く、また狭い路地に冷気の流れが乱されることで人が凍り即死するほどの冷風が吹き荒れることもある。劣悪な下層の環境はさらに致命的なものとなり、そのため下層民にとって『季節』とは死の象徴である 。